佐藤泰志の生涯が映画になる!
小説『海炭市叙景』が映画化され、すべての単行本が文庫となって復活。
もう、当初願った以上の結果に、うれしさでいっぱいのところに
今度は佐藤泰志自身のドキュメンタリーだという。
監督は苫小牧出身の稲塚秀孝監督。
映画『二重被曝~語り部・山口彊の遺言」で知られる方だそうだ。
しかも、佐藤のひとつ年下の稲塚監督は、佐藤が「市街戦の中のジャズメン」
(のちに「市街戦のジャズメン」と改題、『北方文芸』に発表)で
「有島青少年文芸賞」の優秀賞をとった年に「幕が上がるまで」で入選している方だそうだ。
その際、佐藤に手紙を書き、返事ももらっているのだという。
なんだか、あまりの進み行きに驚いているところだ。
そんな中、Nさんに貸してほしいと頼まれた『北方文芸』’90、12を探していたら
「虹」掲載の文学界やら、佐藤の死を報じる週刊誌なども一緒に出てきた。
中に、亡くなる前年、佐藤が道新に書いた「浦河の映画館」という記事コピーを見つけた。
前にも読んでいるのだが、あらためて読むと、いろいろなことが繋がってくる。
佐藤泰志が浦河に行ったのは、妹が1月に亡くなっていたからなのだが、
映画好きだった妹を思い、
「妹がここで映画を見たとしたら、それは彼女にとって、かけがえのない喜びであったに違いない、と考えた。
たぶん東京などで見るよりもずっとである。」と書いている。
そのさびれた、しかし映画好きの館主ががんばって営業を続けている映画館の名は、大黒座。
まえから、佐藤泰志の死後、発表された「星と蜜」に出てくる映画館と同じ名だと思ってはいた。
浦河が妹さんの亡くなった土地であることも知ってはいた。
ただ、映画館の名については、佐藤が小説中の映画館に浦河の映画館の名をつけたかどうか確信が持てなかった。
函館にも昔、大黒座という映画館があったからだ。
しかし、きょう佐藤の文章を読んで、それが浦河の、妹が喜んだ映画館の名だと確信した。
新聞記事は89年6月2日だ。
「星と蜜」は90年12月の文藝賞特別号。
妹への想いをこめた大黒座だったろう。
浦河の大黒座は「小さな町の小さな映画館」という映画になって、今年公開された。
いつか観てみたい。