吉増剛造さんは、わたしがはじめて出会った本物の詩人、前にそう書きました。
今夜は、その吉増剛造さんのことを少し書こうと思います。
本当の本物、という出会いの直観は間違っていませんでした。
吉増さんに会った方なら誰でも、躊躇いなく彼を詩人とよぶでしょう。
あの傲岸不遜な物言いが身上だった中上健次が、吉増さんには
限りない敬意と優しさで接していて(『打ち震えていく時間』吉増剛造+中上健次対談)
驚きながらも納得したものです。
吉増さんから頂いたものは、有形無形あります。
吉増剛造という詩人は、わたしのような地方の無名の者にも丁寧な方で
お手紙もたくさん頂きました。
独特の文字で書かれている文を見るのは嬉しいものでした。
なかでも、吉増さんがブラジル滞在中に頂いた2通の手紙は、
その時期わたしが仕事も家庭もハードだったこともあって
とてもありがたかったです。
ブラジルは日本とは季節が真逆なのですね。
春と秋、ふたつの季節に頂きました。
いつも、ハコダテの気候に想いをはせてくださり、ブラジルの気候を教えてくださいました。
手紙を開いたら、押し花の金色がこぼれました。
文面のなかに、
春 プリマヴェーラ
という語があり、眼も耳も吸い寄せられました。
プリマヴェーラ!! なんて美しい言葉だろうとうっとりしました。
それ以来、心が塞ぐときはプリマヴェーラとつぶやいていました。
すると心が晴れて、光が射すようでした。