朔太郎の里で~『青い家』にたどりつくまで&『わたしたちの夏』

虫の音がたえまない秋の夜です。
夏の終わりと秋の始まり
すがしいようなさみしいような。
ブログを書くのも実に久しぶりの、暑くて慌ただしい日々でした。
 
9月9日、前橋文学館へ行って来ました。
昨夏、萩原朔太郎賞を受賞した詩人・福間健二さんの2ヶ月間にわたる展覧会の最終日です。
その日、福間さんの映画『わたしたちの夏』も上映されるということで、7月から楽しみにしていました。
午後からの映画の前に、ゆっくり展示も見たいので、前夜に前橋入りし、
当日は先ず広瀬川沿い散策を愉しみました。
文学館前の朔太郎像からはじまる詩の道です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
広瀬川は水量が多く、びっくりするほどの急流でした。
暑い前橋ですが、川沿いの詩の道は木陰と川風が心地よく、ベンチで涼んでいる人もいましたよ。
そして、道には萩原朔太郎賞の歴代受賞者の詩碑が建っていました。
それを見て前橋はすごいな、と思いました。
ただ賞を与えて終わりじゃなく、詩碑を建て、朔太郎の名を冠した賞を受賞した詩人たちをずっと讃えているのです。
萩原朔太郎という稀有な詩人を生んだ土地の誇りと、詩と詩人を愛する心にうたれました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
詩の道をたどり、朔太郎の生家跡まで散策しました。
そして、展覧会場へ。
とってもいい展示でした。
福間さんの誕生からこれまでの詳細な年譜(佐藤泰志との出会いや、彼の死も)、
高校生時代からの文学・映画とのかかわり、著作など、
福間健二の全貌をあますところなく伝えるものでした。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
映画『わたしたちの夏』(2011)、やっと観られました。
福間さんの詩のような映画でした。
 
詩の朗読や、ドキュメンタリー風の授業や研究室での映像、
創る方が自由で自在なら、視る方も自由で自在に受け取れる作品だと思いました。
印象的なシーンは、フェンスに凭れた白い衣装の女性と、彼女が千景さんに呟くことば
バスに乗っていくのよ
その女性は、まるで数十年後の千景さんのようでした。
天使的存在、というのが、幼年のエンジェルではないところが独特です。
いわゆる天使が天国からの使いなら、その女性は死の国からのイキでした。
そして、バス。いく。
バスはbirthとdeathを往還するのりものなの?
往く 逝く 生く
森の緑、草の緑が美しいです。
前に、染織家の方が「緑は死と生の色」と言っていたのを思いだします。
夏という緑、生のもっとも盛りのなかに死は濃ゆく息づいている、そう思います。
わたしたちの夏が、楽しく苦しく、美しく腐臭に満ちているのは、そんな八月の
「夏の花」だから
そんなふうに感じました。
また、なんども思いだすでしょう。
思いだすたび、感じ方も変わっていくかもしれません。
感想も育っていく夏の花です。
 
遅ればせながら、この夏の終わりに視られてよかったです。
その会場で、感激の出会いもありました。
『わたしたちの夏』を視た、わたしの夏、すてきでした!

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