きょうは、映画『そこのみにて光輝く』完成披露試写会でした。
招待状を先月いただいて楽しみにしていました。
場所は、『海炭市叙景』の時と同じ芸術ホールで午後の部と夜の部の2回。
海炭市メイトの山本さんと一緒に午後の部へ行ってきました。
山本さんと会うのも久しぶりです。
午前中に迎えに来てくれた彼女と図書館近くのピーベリーでちょっと早いランチ。
「ねぼうセット」は、おおきなポテトとチーズの入った自家製パンが美味!
積もる話をしていたら、あっという間に午後1時。開場時間です。
芸術ホールはすでに最前列から後方までびっしり。
最後部へのぼっていったら、あらっ姉夫婦も観に来ていました。
R15指定ですが、すでにシナリオを読んでいたので、安心して観ていられました。
とても、よかったです。
原作では大森浜の設定ですが、海での撮影は七重浜で撮影されていて、山の姿などは函館人にはちょっと気になりましたが、それも仕方ないですね。
佐藤泰志が小説を執筆した時から、すでに25年以上の歳月が経っていて、大森浜も変わってしまっているのですから。
脚本がいいです。
原作では夏のアジサイが印象的ですが、高田亮さんの脚本はそこもちゃんと描いてくれていました。
暴力やセックスシーンも随所にありますが、イヤな感じではありませんでした。
キャストもよかったです。
綾野剛さん、池脇千鶴さん、菅田将暉さん、主役の若い三人は勿論、高橋和也さん火野正平さん伊佐山ひろ子さん田村泰二郎さん、脇を固めるベテランのみなさんも。
祭りのシーンは、友人の神社で撮影されました。
去年の夏、差し入れを持って伺ったときは、撮影前の準備中でした。
カメラマンの近藤さん、照明の藤井さん、録音の吉田さん、海炭市叙景と同じメンバーが揃っていました。
心に残るシーンがたくさんありました。
砂浜を達夫と千夏が歩きながら会話しているところ、穏やかな海なのに波の音が思いのほか大きく、果てしなく、地球の息のようです。
いま、そこに生きているいのちの鼓動を感じます。
上映後、企画・プロデュースの菅原さん、呉美保監督、綾野剛さんのご挨拶がありました。
呉監督は、小さくて華奢で、長いストレートヘアが少女のようです。
綾野さんは、とても細くてスタイリッシュで声がいいです。
観客の質問タイムもあり、それがとてもよかったです。
(人気沸騰中の綾野さんらしく、東京から来ていたファンの方もいました。)
映画の中で、千夏が母親を「おかあさん」と呼んでいたことについて、あのようなくらしをしている人なら、「おかあさん」とは呼ばず「かあさん」とか「かあちゃん」というのじゃないかしら、と質問されたご婦人がいました。
それへの監督の答えがよかったです。
呼び方については考えましたが、千夏はあのような境遇で仕事もああだけれど、芯の強いしっかりとした女性だと思う、両親の呼び方は、あえてきちんとした呼び方をした、のだと。
とても見事な説得力のある答えです(質問された方も、納得されたご様子でした)。
ほんとに、「おかあさん」と呼ばせたことはよかったです。
この映画のすばらしさは、ともすればおぞましいだけに見られるだろう父親との関係も、幼いころの思い出の歌などもまじえ、家族のつながりや想いが描かれていることでした。
「おとうさん」「おかあさん」と千夏が呼ぶことで、彼女のまっとうさや心根のやさしさが伝わってくるようでしたから。
呉監督が、「これは愛の映画です」と仰る意味がわかります。
この「愛」は達夫と千夏のあいだけではなく、父母、姉弟、達夫と拓児、逝ってしまった者への愛です。
綾野剛さんは、こうも言ってました。
ほんとうは拓児のような奴こそ愛すべき人間、でもいま自分を愛せないような人がたくさんいる、僕はそんな人を抱きしめていきたい、と。
『そこのみにて光輝く』いい映画です。ぜひ、ご覧になってください。