詩は、映画は、小説は

7月も早、4回目の週末。
暑いですね。夏ですね。
26℃。夏日です。
1週間前、東京に住む息子が帰ってきていたときは、ちょうど涼しい(肌寒いくらいの)日が続いていて、函館はいいなあ、エアコンなくても暮らせるんだから、と言っていましたが。
(エアコンどころか、今年は扇風機もまだ回してないです)
東京や関西は、30℃を優に超えて猛暑日とか。
熱中症に気をつけてくださいね。
 
なんだか慌ただしく過ごしていて、ここを開くのも、えっと20日ぶり?!
来週からまた忙しくなるの・・だわ。
この間にあったこと、観たこと、読んだこと、頂いたもののメモだけでも、いまのうちに記しておこうかな。
 
◆17日は詩の朗読に参加してきました。
毎回、函館ゆかりの文学者をとりあげてすてきな朗読を聴かせてくれる函館朗読奉仕会の「函館文学紀行Vol.8 道南を詠む~詩人からあなたへ~」です。
3部構成で、1部は吉田一穂や三木露風らの詩を、朗読会の方々が読まれました。2部は「雨彦」「帆」「游人」の同人の自作詩朗読と荒木元さんの詩を船矢美幸さんが朗読(荒木さんは勤務の都合で作品だけ提出)、3部は奥尻出身で東京在住の麻生直子さんが駆けつけてくれて、「憶えていてください」「足形のレリーフ」などを朗読されました。
道南の詩人が一堂に会し朗読するのは初めてのことで、たくさんのお客さんの反応もとてもよかったです。詩誌の仲間や友人たちも来てくれていたのですが、教えていない姉が来ていて、ちょっとびっくり(姉が所属しているコーラスグループの関係で知ったらしいです)。
その姉が夜に電話で「あんたの詩、前に読んだ時は難しくてよくわからなかったけれど、きょう聴いてたら、すっと伝わってわかった、よかったよ」と言ってくれました。
翌日には、点字の仲間からも電話があって、彼女も来ていたことを知りました。素晴らしかったよ、と恐縮するほどほめてくれました。
これまで、詩は読むものと思って朗読にも消極的でしたが、今回の反応はうれしい驚きでした。また機会があったら、尻込みせずやってみようと思います。
 
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◆映画を観ました。
①映画館で。数ヶ月にわたる上映の終わる『そこのみのて光輝く』を再び。前に観た時より余裕を持って、ゆっくり味わえました。原作が佐藤泰志という思い入れを差し引いても、いい脚本、いい俳優、いい映画。モントリオールでもきっと好い評価をいただけると思います。
上映前に待っている時、受付にいた菅原さんと話をしていたら前の映画のエンディングの曲がジム・オルーク♪ 『私の男』でした。
わ、海炭市メイトの山本さんが出てきました。『そこのみ~』の試写会も一緒に行った仲です。数日前、彼女から「熊切監督、やったね。おめでとう!」のメールが届いたばかりでした。
モスクワ国際映画祭のグランプリ受賞のことです! 同様の手紙を札幌の友人からも貰いました。彼女も『そこのみにて光輝く』『私の男』ともに観てくれました。
②DVDで。『オアシスOASIS』『そして父になる』『空気人形』を。
・『オアシス』(2002 イ・チャンドン)は、刑期を終えて(交通事故を起こした兄の身代わりで刑務所に入っていた)出所してきた青年と、事故被害者の遺族である障害者の女性との物語。社会不適応者である青年は、自分の身なりには頓着しないでも母に暖かそうな服を買って帰る優しさがある。女性も青年も社会や家庭から疎外された存在。二人には愛が芽生え、分かり合えているのだが、世間や法には伝わらない。考えさせられる作品でした。
・『そして父になる』『空気人形』はともに是枝裕和監督作品。
『そして~』の結末に、割り切れないものを感じましたが、じゃあどうすればいいのかという答えを明確に持っているわけでもないので、もやもやの後味。
ちょうど観たあとすぐに、父子関係取り消しの申し立てをしていた裁判に、DNA鑑定より民法の「嫡出」推定を尊重し、母親の申し立てを退けるという最高裁判決がおりて、愕然としました。
血縁関係がすべてとは思いませんが、この案件は、法律上の父はすでに母と離婚していて、子は実母・実父と暮らしているのです。そのような状態でも「子どもの身分の法的安定性を保持」すると言えるのでしょうか。
また、これとは別に、人工授精で誕生した子が実父を知りたいと裁判を起こしているケースもあります。
子が実の親を知りたいという欲求は当然のことだろうと思います。わからないほうが幸せだ、などというのは酷です。そこに至るまで、どれほど悩んだか。自分には責のないことで。などなど、思うのでありました。
・『空気人形』は、つっこみたくなるところもありました(しゃべるのはともかく、働きだして字を書くところとか)が、主役の女優さんの肢体が美しく。なにしろ、なんといっても吉野弘の詩がいいので。詩の力。是枝監督が、「生命は」という詩に触発され、この映画を作られたということを記憶します。詩もまた、虻であり、風となるのでしょう。
 
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
 
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない
(吉野弘「生命は」より)
 
◆詩誌と詩集を戴きました。
①『帆』98号。
朗読会でご一緒した須賀ユキさんから。
須賀さんは長く教職にあった方で、凛として、藍色の和服姿がお似合いでした。この号の「昭和八十九年」も軽快で自在な語りが魅力です。
書き続けられて、帆を進ませて98号! 敬服します。
 
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②『風人』を本田初美さんから。
本田さんは紋別郡湧別町の方です。「芭露」という地名が不思議なひびき♪
彼女の詩もそうですが、「日録抄」が生活を映してとてもいいです。
豆を植え、鶏を育て、山菜を漬け、吟行へ出かけ、文章を書き、同人誌を発行します。
働き者で、真面目な本田さんを見習わなければと、思います(思うだけで実践が伴わないワタシです)。
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③詩集『海のエスキス』を若宮明彦さんから。
Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ部から成り、Ⅰは海・Ⅱは空・Ⅲは宇宙というテーマで構成されています。
理学博士でもある若宮さんの詩は、古代から現在まで自由に駆けめぐって、大いなる旅のようです。
縦長の造本でカヴァーの模様の質感がすてきで触ってみたら、凹凸がありました。珊瑚の砕けた白砂って、こんなでしょうか?
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(書肆山田 2500円+税)
 
 
 
◆小説『ボラード病』(吉村萬壱 著)を読みました。
女性の文体で、小学生の女の子の日々が書かれているのですが、ザワザワと怖い小説です。
なぜ人の顔を描いたらだめなのか。なぜ級友たちは次々死んでいくのか。
なぜ隔離されているのか。
いろんなことを考えます。
震えます。
もうボラード病は蔓延してるのかもしれません。
そして、内容は全然違うのに『瓶詰地獄』と『東京島』も思い出しました。
物語の「海塚市」という地名もすごく示唆的。
読書にかかる時間より、読後に囚われている時間のほうが長くなる予感の作品です。
 
ボラード病
 
 
 
 
 
 
(文藝春秋 1512円)
 
 
 
 
吉野弘「生命(いのち)は」、長くなるので全行引用はしませんでしたが、書き出しはこうでした。
 
生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
(中略)
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ。
 
詩も映画も小説も、それ自身だけでは完結できないものかもしれません。
他者に、聴かれて、観られて、読まれて、はじめていのちあるものになるような気がします。
 

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